第17章 それは突然に
五条先輩と傑先輩によってスルスルと続けられる会話。それはいつも通りの二人の光景だ。
ただいつもと違うのは、私はここから指先一つ動かさず黙りと立っているということと、五条先輩の腕に絡みついている女性がいるということ。
「悟君、この人達誰?それにしてもお兄さんすっごいイケメンだねぇ」
五条先輩と傑先輩のそんな会話へと割り込んだのは、そんな甘ったるいほどの女性の声。
それにピクリと反応した傑先輩の肩が小さく揺れる。そして鋭いばかりの傑先輩の冷ややかな視線が女性を捉えると再び五条先輩へと向けられた。
「コイツは俺のダチ、同じ学校の奴」
そう隣へと言葉を落とした五条先輩は「傑イケメンだとよ、良かったな」なんてちっとも心のこもってない台詞を言いながらケラケラと笑うようにして傑先輩へとその碧色の瞳をサングラス越しに向けた。
「はは、それはどうもありがとう」
無視を決め込むつもりなのかと思ったが、その視線は女性へと向けられることはないもののまるで棒読みのような言葉だけが放たれる。
まるでそんな様子は傑先輩らしくないと思った。それなのにも関わらず…今の私はこれ以上何かを疑問に思うことすら難しい。