第17章 それは突然に
そこにいたのは、いつも通り高専の制服を着た五条先輩と…そしてそんな五条先輩に腕を絡めている女の子の姿。
「…………」
綺麗に巻かれた栗色の髪に可愛らしいネイル、崩れる事なく完璧なメイクに流行の最先端と言うべき着こなしのオシャレな制服。
自分とはかけ離れた美しく可愛い存在。
そんな人が五条先輩の腕を取りピッタリとくっ付いている。
思わず言葉につまった。それどころか大きく目を見開き動揺した。
ただ私はギシリと動きを止め唖然とその光景を目にし…思わず呼吸すら止めて満面の笑みだったその表情を直ぐに消した。ギリギリと痛む胸を押さえつけることはせずに、ただそこへアホみたいに突っ立っていた。
だって言葉なんて出なかった。五条先輩がこうして自分の知らない女性と腕を絡めて親密そうに歩いている姿など…見たことは無かったからだ。
ナンパされているのは何度も見てきた。なんなら知らない女の人から宣戦布告のような電話すら貰ったことはあったけれど。
それでも未だこの光景は見ないで済んでいた。それは私が見ないようにと全力で避けてきていたのもあるし、五条先輩も暗黙の了解みたいにこの光景を私へ見せることは無かったからだ。
だって言ったじゃないか…私へと電話をかけてきた五条先輩絡みの女の人に…それ相応の責任は取らせた。悪かったって。
それは自分絡みの女の人と私を関わらせる気は無かったということ。そうだ、それはそうだ。誰が好き好んでセフレ同士を会わせようなどと思うのか。
それなのに何故…
何故今になって声をかけてきたの。
女の人と一緒にいるのならば…声なんてかけてほしく無かった…