第17章 それは突然に
傑先輩が呪物をその箱へと収めると、そのままトランクへとしまい込み扉を閉めた。
「夏油君柊木さん、お疲れ様です」
どうやら電話を終えたらしい補助監督が携帯をポケットへとしまいこみながらこちらへとやって来る。そして何やら申し訳なさそうに顔を歪ませながら口を開いた。
「申し訳ないんだけれど、この呪物を緊急で京都へ運ぶことになって高専まで送れなくなってしまったんだ。二人ともこの後は確か任務入っていなかったよね?高専まで自分達で戻れるかな?」
「あぁ、そうなんですね。私達なら大丈夫です、電車で帰りますよ」
その言葉に早々と答えた夏油先輩は相当急いでいるらしい補助監督へと笑顔を向け「本当ごめんね!お疲れ様です!」と言いながら慌ただしく運転席へと乗り込んだ彼へとヒラヒラと手を振った。
「近場の任務で良かったね。渋谷から高専までなら大した距離じゃないし。電車で帰る?それとも呪霊に乗って行くかい?」
「補助監督さん忙しそうだったね。電車で帰ろう。この後は任務もないし急がなくても大丈夫。それとも先輩は何か予定とかあった?」
「いいや、何もないよ。じゃあたまには電車でゆっくり帰ろうか」
「うん、そうしよう」
普段の任務はほとんど車での送迎付きだ。まぁよく考えたらリッチな待遇だ。たまには電車も良いだろう、制服を着て電車に乗るなんて普通の学生みたいで悪くない。
そんな呑気な事を思っていたはずだった。
数分前までは…