第17章 それは突然に
車の前では何やら電話をしている顔見知りの補助監督が、忙しなくメモを取りながら誰かと電話をしている。
補助監督は呪術師にとってなくてはならない存在だ。任務の詳細な内容の確認はもちろん任務先の現場を把握しそれを呪術師に伝えるという重大な仕事をこなしている。
それ以外にも書類作成や送迎なんかも業務内容に含まれる為、補助監督をしている人間はいつも忙しなく働いているイメージがあった。
呪術師のサポート役的存在、それが補助監督だ。
私達に気が付いた若い男性の補助監督は、電話を耳に当てたままペコリとこちらへとお辞儀をしている。多分、お疲れ様という意味だろう。
それに傑先輩は軽く爽やかな表情を見せると、そのまま車のトランクを開けてある物を取り出した。
「それ、何ですか?」
「この呪物を封印する箱だよ。この札が強力な呪力を抑える役目をしてる」
「特級呪物初めて見ました。こんな街中にあるなんて信じられないですね」
「最近捕まった呪詛師が隠し持っていた物らしい。だけどここまでの呪いの塊を管理するのは無理だったようだね。まるでゴミみたいにそこらに捨てるなんて正気とは思えないよ」
本当にそうだ。私達が今いる場所は渋谷の廃墟ビルの中だ。一二本道を挟めば、そこは人が溢れる渋谷の駅前だというのに…こんな物を簡単に捨てるなど正気とは思えない。