第16章 その気持ちが
「うー、お腹いっぱい。心なしかクリームの食べ過ぎで気持ち悪い」
「あれだけ食べればね」
「傑先輩は大丈夫?」
「夕食がまだだったからちょうど良かったよ」
「空きっ腹にクリームの方が気持ち悪くならない?」
「案外平気だったよ、可愛い後輩達からのお祝いのケーキだからかな」
ふふっと笑いながら寮の廊下を歩く傑先輩を見上げて、やはり今日は待っていて良かったと思う。
きっとあのまま飾りの後片付けをして部屋で眠っていたら後悔していたに違いない。
だけれど疲れているであろう傑先輩をこんな時間まで拘束していたことに申し訳なさを感じながらも、嬉しそうにしてくれた傑先輩の姿を見て喜んでくれて良かったと胸を撫で下ろした。
「先輩こんな遅くまでごめんね」
時刻はもう2時を過ぎている。なんだかんだ楽しく話をしていたらあっという間に時間が過ぎていて、驚きつつも男子寮と女子寮が別れる場所で先輩に向き合う。
「いいや、こちらこそこんな時間まで待たせてすまなかったね」
何だか名残惜しく感じる。しばらく会えなくなるわけでもないのに…そんな私の態度に気が付いたのかは分からないけれど私を見下ろしていた先輩は不意にゆるりと口角を上げた。
「部屋、泊まって行くかい?」