第16章 その気持ちが
どうしても今日お祝いしたかった。
傑先輩の大切な誕生日を。
どうしてここまでやけになって待ち続けたのかと言われたら答えられないけれど…ただ、傑先輩におめでとうを言いたかったのだ。
そんなシンプルで飾り気のないどうしようもない理由だけれど
「どのくらい待っていたの。30分?1時間?もしかして、2時間なんて言わないよね?」
その声は少しばかり怒っているのか、それとも呆れているのか…どこかいつもの彼よりは強い口調にも聞こえる。
「…30分くらいかな」
本当は嘘だ。2時間半は待っていた。
「本当に?」
「本当だよ…」
「嘘ついてない?こんなにも冷たいのに本当に30分なの?」
「…えっと」
「うん?」
「2時間…くらいだったかも…」
あまりの傑先輩の圧にそうポロリと言葉を落とせば、傑先輩は「はぁ」と小さな溜息を吐き出して、私を抱きしめる力を強めた。