第16章 その気持ちが
「私が居ないときは、ここからお菓子出してお口直ししてね!」
傑先輩をニコニコと見上げれば、その巾着をジッと見つめていた傑先輩がゆっくりと目尻を下げた。
その表情は、眉を垂れ下げ瞳を細めとても温かい顔をしている。
「ありがとう、すごく嬉しいよ」
それはどこまでも嘘偽りなく放たれた、傑先輩の素直な気持ちなのだと聞かなくても分かった。
何故ならば、傑先輩の巾着を見つめる表情がまるで宝物でも見つけたみたいに幸せそうな顔をしていたからだ。
「大切にするよ、毎日持ち歩く。絶対に大事にする」
一つ一つ放たれる言葉が、私の心へとすとんと落ちていく。まさかこんなにも喜んでくれるとは思っていなかった。
高価な物じゃなくても、普通の男子高校生にあげるようなプレゼントじゃなくても、傑先輩はまるでそれが一番欲しかったのだというみたいに喜んでくれた。
コレにして良かったな。傑先輩の為に色々考えて、自分があげたいと思ったモノを信じて良かった。
巾着へと向けていた視線が今度は私へと向けられると、やっぱりそれはそれはとてつもないほど嬉しそうに私へと優しい笑顔を向けた。
「本当に、ありがとう」