第16章 その気持ちが
カツカツと小さな音が聞こえてきて、俯いていた顔をパッと持ち上げる。辺りは薄暗くよく見えないが、少し集中し呪力を感じれば誰が来たかなんて聞かなくても分かった。
私はそれに慌てて身体を起こすとパタパタと走り出す、そしてうっすらと人影が見えて来た瞬間
「傑先輩!おかえり!!」
ニコニコと全開の笑みで傑先輩へと駆け寄った。
「え、こんな時間にどうしたんだい!?」
切長な瞳は丸々と見開かれ、どっからどう見ても驚いた表情をする先輩にまた一歩近づけば、私を見下ろす傑先輩に向かってこれでもかというほど嬉しい気持ちになる。良かった、先輩帰って来た。
「傑先輩を待ってたんだよ」
「私を?」
「うん!へへ、どうしても直接言いたくて」
「何かあったのかい?」
私の言葉に、驚いた表情をしていた顔を一瞬にして心配気な顔付きへと変えた傑先輩は、こちらを覗き込むようにきて眉を垂れ下げている。多分、私がまた五条先輩と何かあったと勘違いしたのかもしれない。
「違うよ、何かあったとかじゃなくて」
「じゃあ、どうしたの?」
私はポケットからある物をガサゴソと取り出すと、傑先輩の手を掴んでそれを掌へとのせた。
「傑先輩、お誕生日おめでとう!!」