第16章 その気持ちが
もちろんそんな先生の頼み事を断れるはずもなく、一番手前にいた伊地知君が「はい」と返事をする。
「分かりました、あ…でもまだここの片付けが」
夜蛾先生を見ていた雄ちゃんが、チラリと辺りを見渡し困ったような表情を浮かべた。
「ここの片付けは私がするから大丈夫だよ」
「え!一人で!?」
「10分もあれば終わるから全然平気。だから3人も呪具の片付けが終わったらそのまま部屋に戻っちゃって大丈夫だからね」
「本当に大丈夫ですか?」
「平気だよ!七ちゃんは心配性だなぁ、3人もお手伝い頑張ってね!こっちは任せて」
「エナちゃんごめんね、ありがとう」
「うん!行ってらっしゃい!」
「何かあったらすぐに連絡して下さい」
「はいはーい!平気よー!」
食堂を出て行こうとする3人に手をひらひらと振りながら、ドアが閉まったのを合図に近くの椅子へとガタリと腰をかける。
「はぁ…やっぱり傑先輩の誕生日お祝いしたかったな…」
重いため息が口から溢れ落ちポケットに入れていた携帯を取り出す。
サプライズパーティーをするつもりだったから、まだ傑先輩に誕生日おめでとうと言えていないのだ。
まさか会えなくなるとは思ってもいなかったな…