第16章 その気持ちが
「ここに居たか、お前達に用があったんだ」
泣く泣く飾りを片付けようと動き出した時だった。そんな低い声が聞こえて来て、くるりと声の方へと振り返ればそこには夜蛾先生が立っている。
「夜蛾先生、どうしたんですか?」
雄ちゃんの声に夜蛾先生は食堂内へと入ってくるとその中をくるりと見渡す。
「夏油の誕生日か、だがアイツはさっき任務に出て行ったぞ」
「はい、伊地知君に聞きました。今から片付ける所です」
しょんぼりとした顔のままそう先生に答えれば、夜蛾先生は少しばかり申し訳無さそうな顔をする。だけれどさっきの言葉を聞く限り、夜蛾先生も今日が傑先輩の誕生日だと知っていたのだろう、だからなのか余計に申し訳なさそうに見えた。
生徒の誕生日をきちんと覚えている辺り夜蛾先生の優しさが伝わってきて、らしいなと思う。でもそれならば傑先輩を連れて行って欲しくなかったなんて我儘な感情が生まれたことは許して欲しい。
「夏油は後輩に慕われているんだな」そんな呟くような先生の言葉が聞こえて来たあと、用事を思い出したかのようにスッと視線をまた私達へと戻した。
「悪いんだが今から少し手伝って欲しい。呪具の回収をした車が校舎前に到着したんだが量が多くて補助監督一人では運べないそうだ。かなりの重さの物だから男手が必要でな、七海灰原伊地知、行ってくれるか?」