第16章 その気持ちが
「こんな時間から夏油さんが呼び出されるほどの緊急任務なんですよ。冷静に考えて下さい、私達が変われるような内容だとは思えません」
いや、そらそーだわ。冷静に考えなくても、傑先輩の受け持つ任務を私達が変われるはずがなかった…
七ちゃんの言葉に、私と雄ちゃんの動きがピタリと止まる。
「今から厄介な任務に行くのだとしたら、恐らく帰宅は真夜中でしょう。今日は残念ですがまた後日改めてお祝いの場を設けましょう」
落ち着いた七ちゃんの言葉に、思わず私と雄ちゃんからは大きな溜息が溢れ出した。
いや、そうだ、もう今日先輩の誕生日をお祝いするのはどう考えたって無理だろう。明日だって朝から任務なのだ、真夜中に騒いで誕生日パーティーなんてしたようもんなら夜蛾先生あたりにゲンコツをお見舞いされるのが目に見えている。それはごめんだ、それだけはごめんだ…
でも、傑先輩の誕生日をお祝いしたかった。今日…したかった…
だって、傑先輩の誕生日は明日でも明後日でもない。今日なのだ…
2月3日である今日なのだ。
「仕方ないね…じゃあ飾り片付けようか」
雄ちゃんの言葉に「うん…」と小さく頷けば、あまりに落ち込む私と雄ちゃんに、七ちゃんは困ったように溜息を吐き出し、伊地知君は心配そうに眉を垂れ下げた。