第16章 その気持ちが
「どうしました、伊地知君」
「夏油先輩が…」
「夏油さんが?」
「緊急で任務が入ったようで今から高専を出るそうです!!」
「え!今から!?もう19時なのに!?今から任務!?!?」
伊地知君の言葉に、一気に頭は大混乱で大きな声が思わず口からこぼれ落ちる。
「それは確かな情報なんですか」
「はい…補助監督と歩いている夏油先輩を見かけて慌てて話しかけたのですが…なかなか厄介な任務が今から入ってしまったと」
嘘でしょ、嘘だと言って。そもそもこんな時間から高校生を仕事に行かせるなんてどうかしている。いや、もはや生死の関わる仕事を子供にさせてる時点で全てがどうかしている業界ではあるんだけどさ…
いくら先輩が強くて貴重な術師だからって、普通こんな時間から学生を外に出す!?いや、待って。時々呪霊の出没条件が深夜だとかで真夜中開始の任務とかあったわ。でもさ、だけどさ…
「夏油先輩今日誕生日なんですけど!!誕生日の人をこんな時間から任務行かせるなんてー!!」
「よし、こうなったらせめて僕達が夏油さんの代わりに任務に行こう!」
「雄ちゃんに賛成!!そうと決まれば急げ!先輩出ちゃうよ!!」
スマホやらその辺に脱ぎ捨てていた上着やらをかき集め慌てて立ち上がれば、食堂をさっそく出て行こうとする私と雄ちゃんの背中に声が掛かる。