第15章 浮遊感
だけれどそんな私に落ちてきたのは予想外の言葉で。
「慣れてるわけねェだろ」
「……ぇ…」
「つーかそんなこと慣れてたまるかよ。人の面倒なんか見てらんねェし、面倒くさ」
「え、でも…だって」
じゃあ何で今…
ドライヤーのコンセントを刺した五条先輩は、スイッチを入れるとゴォーという生温かい風を私の髪へとあてる。
何で今…私にはこうしてくれるの…
まるで言っている事が矛盾している先輩を鏡越しにジッと見つめれば、まだサングラスをしていないその碧色と視線が絡み合う。
以前怪我をした時だってそうだ。三日間もそれはそれは五条先輩の性格からは想像が出来ないほど甲斐甲斐しく世話を焼いてくれていた。何なら今なんて髪まで丁寧に乾かしてくれている。五条先輩自身、今言っていることとやっていることへの矛盾に気が付いているのだろうか。
「何だよ」
「時々先輩って、何考えてるか分からないなと思って」
「そりゃあ俺の頭ん中がお前に理解できるわけないでしょ。俺のこと誰だと思ってんの」
「先輩の知能レベルを私が理解出来ないことくらい分かってるけど…そうじゃなくてさ、なんか…」
「お前見てると調子狂うんだよ」
「……調子狂う…の…?」
「自分らしくねェことやってる自覚はあんの。だから黙ってろ、黙って見て見ぬふりしてろよ」