第15章 浮遊感
セフレにとって、相手の女の影など話題に出すことはタブーだ。考えるまでもなく暗黙の了解である。だってそんなこと聞くような真っ当な関係では無いのだから。そもそも嫉妬すること自体痴がましいにも程があるわけで。
「あ?」
怒った。いや怒るよ、当然だよ。だって自分は、傑先輩とのことをバレたくなくて、絶対にバレたくはなくて…それなのにも関わらず五条先輩の女の影を気にするんだ。気にする資格なんてこれっぽっちもないくせに。
私は一体どうしたいんだ、何がしたい?何を言えば気がすむ?何て答えてもらえばこの感情を抑えられる?
分かんない。分かんないくせに苛立ちとか悲しみとか嫉妬心とかだけは一丁前に溢れ出して止まらない。
馬鹿みたいだ。せっかくこんなにも先輩と幸せな時間を過ごせているというのに、何でこんなことになるの。何でこんなこと言っちゃったの。
だからと言ってしまったことを取り消せるはずもなく、先輩の方からは重たいため息が聞こえてきて、それを聞いた瞬間背筋が凍るような感覚になる。
謝ったら方がいただろうか。いやでも謝って何になる?言ってしまったことを取り消せるわけでもなければ、私の嫉妬心が消えることもない。むしろ余計に…先輩をイラつかせてしまうだけかも…