第15章 浮遊感
ぐるぐる巻にしてしていたバスタオルが解かれ、五条先輩はポンポンと優しい手つきで私をふいてくれる。顔、身体、髪全てをそれはそれは丁寧に繊細に優しく、だ。
いや、先輩ってそんな優しいタッチ出来たんだなんて思うけれど、そう言えばセックスをする時もいつも優しいなと思い出す。そりゃあ盛り上がりに盛り上がって激しく打ちつけられる時はあるけれど、それはあくまで“激しい”であって“優しく無い”というくくりには入らない。
いくら激しく私を抱こうが、腰を打ち付けようが、噛み付くようなキスをしようが、いつだってその手は優しく私を包み込んでいた。
意地悪な声もどこか奥底の芯の部分にはしっかりと優しさが含まれていて、先輩の行為に対し雑だとか優しく無いだとか適当だとかそんなことは一度たりとも思ったことなどなかった。
五条の実家に帰る時はいつも和服を着せられると言っていただけあって、何の戸惑いもなく私へ浴衣を着せ帯を結ぶ。
そのスマートで手慣れた手つきに思わずムッとした気持ちになるのは、きっとやるせないほどの嫉妬心からだ。他のセフレにもこうしているんだろうな…そうじゃなきゃ、ここまで世話を焼くことに慣れているはずがない。
「…慣れてるね」
そうポソリと言葉を落としてから、しまったと慌てて口を塞ぐ。