第15章 浮遊感
ぐったりとしながらもブツブツと文句を言う私を、五条先輩は抱きかかえるとザバっと露天風呂から上がり脱衣所へと向かう。
脱衣所へと着くなりバスタオルでぐるぐる巻きに私の身体を包み込むと、そのまま自身の体を適当に拭いて浴衣に袖を通した。
「まだ動けなさそう?気持ち良すぎて腰砕けた?」
こう言うところが空気が読めないと皆んなから言われる原因だろう。だってもっと気を使うとか、もっとオブラートに包んで言うとか、いくらでもやりようはあるわけで…それでも私と二人きりでいる時は皆んなといる時より多分口数は少ない方だと思う。
三年生だけでいるときは、いつもゲラゲラ大口を開けて笑っているイメージだし、夏油先輩といる時なんかはとんでもない口喧嘩からの怪獣大戦争だし。
歌姫先輩は「五条うっさい!黙れ!!」って言われているのを何度か見たこともある。
そう思うと、やっぱり二人きりの時の五条先輩は少しばかり口数が少ないのかもしれない。それが何でなのかは分からないし、もしかして気をつかわれてる…?なんて初めは思わなくも無かったけど、よく考えれば天下の五条悟が私なんかに気を使うはずも無かった。
まぁ所詮私達はセフレだし、セフレに言葉も会話もそんなもの必要ないと言ったら必要ないんだけど。でも口数の少ない五条先輩が、私と二人でいる時はそれが自然で当たり前なのだと今は思っている。
それが何でなのかはやっぱり分かりはしないけど、でも…五条先輩にとって私といる時はそれが楽なのならば、それで良い。それが良い。それが私達二人の特別だと思えるから、それで良い。