第15章 浮遊感
「じゃあ労ってもらおうか」
「ん?」
「疲れ、癒してくんねェの?」
その言葉にどうやってだ?と一瞬考え込むが、私の腹をするりと撫でた五条先輩は抱きかかえるようにしてくるっと私を半回転させると、跨らせるようにして自身の脚の上へと私を座らせた。
突然対面になった先輩と私の体制に思わず唖然とし…そして彼を見つめる。
ゆらゆらと揺らめく湯気で妙な気分になるのは何故だろうか。
「癒すって…どうやって癒せば良いの?」
今さらそんな分かりきっていることを聞いてしまうのは、少なからず今の体制に恥ずかしさを覚えているからだ。だって、先輩も私も何も纏わずお湯の中で抱きしめ合っている状態で、何の感情もなくごくごく普通になど過ごせるはずがない。
白銀の髪はいつもと違い、軽く後ろに流すようにしてかき上げられているし、普段見えないおでこを見せているのが何とも色っぽく妖艶だ。
透き通るように美しい碧は熱気のせいか少しばかり濡れて見えて、それがまた彼の色気を際立たせていた。
こんなの…妙な気分になるなと言う方が無理な話だ。
「そんなの決まってんじゃん。気持ち良いことで、だよ」
意地悪気で甘美な声が私の耳へと落ちて来る。
甘くとろけてしまいそうなほど、誘惑味に溢れた声だ。