第15章 浮遊感
まるで忍者のごとく素早い動きで身体と髪を洗ったのは良いものの、バスタオルを付けたまま温泉に入るわけにもいかず…先輩がこちらを見ていないのを確認して足先をそっと温泉に浸ける。
かといって、もちろん客室露天風呂がそんな広々としているわけもなく、ましてや高身長の五条先輩が入っている分私が一緒に入ればそこそこの狭さで…
とりあえず身体をお湯に浸けて、ちょこんと先輩の隣で身体を覆うようにして体操座りをした。
「何してんの?」
「…何してるの…とは?」
「いや、何でそんな丸まってんの」
「だって…それは、恥ずかしいし…明るいし」
外は既に真っ暗ということもあり、オレンジ色のライトに照らされているだけで明る過ぎとまではいかないが、やはり明るさは十分にある。
「今さらすぎない?」
「そう…だけど…」
もごもごと口籠る私を、珍しくサングラスを外している五条先輩の碧色がこちらを見つめニヤリと口角を上げた。
瞬間、グイッと行き良いよく引き寄せられた腕。水の抵抗の無さに身体がふわりと浮く。そして気が付いた時には私の身体はあっという間に先輩の脚の間へとすっぽりと収まっていた。