第14章 堕ちてやる
愛ほど歪んだ呪いはない
まさにそんな言葉が相応しいだろう。
幸せでふわふわとしたそんなありふれた感情ならばよかった。だけどこれは違う、重たくドロドロとしたそんな感情なのだ。
欲しい、五条先輩が欲しい。
だけれどそれは偽物なんかじゃなくて、この目の前で私を強い眼差しで見つめてくれる五条悟が欲しいのだ。
ドロドロとした黒い世界が晴れていく。それはまるでおとぎ話の中で、嵐が過ぎ去り王子様が迎えに来てくれたようなシーンにも見える。
そんなことを考えながら、私は小さくフッと笑ってしまった。
「こんな山奥まで来て一瞬かよ」
どうやら夢の中で過ごした何日もの私の生活は、ここではほんの一瞬に過ぎなかったらしい。
「五条先輩も領域内に取り込まれてた?」
「いーや、取り込まれる前に回避した。まぁお前が運悪く飲み込まれちまったからどうするか考えてたら、丁度領域内が歪んだんだよ。そこを破壊して万事解決」
「そっか、さすがだね」
帳が解除されれば、青空が見えてくる。
「まぁお前も、よく幻術解けたじゃん。もう少し時間かかると思ってた」
どうやら私が領域内で幻術を掛けられていたのはお見通しらしい。六眼はやっぱり凄いなぁ。