第14章 堕ちてやる
本来ならば焦るような場面だったと思う。それでもこの時の私はやけに冷静で、そして素晴らしいほどに大きな音を上げた破壊音と共にこちらに差し込んだ一筋の光を見て思った。
「お前にしては上出来じゃん」
一体何が上出来だと言うのだろうか。私は何も出来ていない。ただかろうじて呪霊の目的を理解し幻術を解くことが出来ただけだ。それだけに過ぎない。この空間を破壊したのは紛れもなく私ではなく、目の前で私をニヤリと楽しそうに見つめる人物のおかげだ。
あぁ…やっぱり私が大好きなのは、この自信に満ち溢れた強く美しいこの碧だ。
五条先輩の見せるこの碧なのだ。
夢物語でも良いと思っていた。多分それを呪霊に見透かされたのだ。何と情けないことか…でも実際はそうでは無かった。
恋とは呪いのようだ。心の奥底から作り出される重たい感情。それを利用された。呪術師としてはまさに命をも捨て去るそんな情け無い場面。
だけど一瞬でもそれで良いと思ってしまった。夢物語でも良いからと…だけれどそれは大きな間違いで、私が本当に求めていたモノでも何でも無かったのだ。