第14章 堕ちてやる
私の声が聞こえたのだろう。その背中はゆっくりとこちらへと振り向き…そしてニッコリと笑みを作った。
「エナ」
私の名前を呼ぶ声が響き渡る。五条先輩へと近づいた私の頭を先輩はポンポンと優しく撫でると「行くぞ」と言って手を引き歩き始めた。
何だか五条先輩やけに機嫌が良いな。
「先輩ご機嫌だね」
「そうか?お前と居るからかな」
「へ?」
「だから、俺の機嫌が良いのはお前が居るからって話」
いやいや、何言ってるの?どうしちゃったの?五条先輩…五条先輩ってそんな事言うキャラだった?
だけれど見上げた先の五条先輩は、それはそれは優し気に瞳を細めてこちらを見下ろしている。それはサングラス越しにも関わらず、とても優しい瞳をしていることが分かるほどだ。
「任務疲れたろ、俺の部屋でゆっくりしよ」
「え、あ…うん。そうだね」
先輩はそんな私にやはりニコリと穏やかな笑みを作ると「お前が観たがってたDVD借りといた」と白い歯を見せ再び歩き始める。
どうやら今日の五条先輩は本当に機嫌が良いらしい。