第14章 堕ちてやる
「ヘマすんなよ」
境内に近い方の鳥居の前には五条先輩が、奥の方にある鳥居には私が。もし何か起きるとしたら境内に近い方の鳥居だろうと先輩は考えたのかも知れない。
「分かってるよ、ヘマはしない」
「俺が右手を上げたら同時に鳥居にはいるぞ」
「了解」
お互い鳥居の前で立ち止まる。二つの鳥居の間は約10メートルほどだ。10メートル先に居る五条先輩は片手にポケットへと手を入れたまま、そして反対の手をスッと上へと持ち上げると、それを合図に足を一歩踏み出した。
その時、遠くにいた五条先輩の口元が何か動いた気がした。その言葉はこちらに聞こえることは無かったけれど、多分私へ何か小さく呟いたのかもしれない。
片足が地面に着いた瞬間、私は腰に付けていた呪具を右手で掴み、反対の手は太腿へと付けられたポーチへと入れる。
何故ならば、ゾッとするほどの呪力を全身で感じた瞬間目の前の景色が一変したからだ。
何だここは…
あたり一面白の世界。右を見ても左を見ても、何処を見ても真っ白。
呪霊の領域内…だよね。それにしては先ほど感じた恐ろしいほどの呪力は消え去り、微かにしか感じないれけど…