第12章 黒い玉
「そんなことないですよ。傑先輩はいつもカッコイイです」
その証拠に、街になんて行けば一歩あるくたびキャーキャーと騒がれている。
私の先ほどの言葉に一瞬ピクリと身体を揺らした傑先輩だったが、それも一瞬で直ぐに意地悪気な言葉が降って来た。
「どこら辺がカッコイイと思ってくれているんだい?気になるなぁ」
「うーん、まず顔!」
「ははっ」
否定しない辺りこれは聞き飽きている言葉なのだろう。それにしても三年生は、傑先輩も五条先輩も硝子先輩も顔がやたら良いんだよなぁ。顔面偏差値が高過ぎる。
「あとはー、声!」
「声?それは初めて言われたよ」
「え?そうなんですか?雄ちゃんが夏油先輩の声って男らしくて色っぽくてカッコイイって言ってましたよ!あと私は傑先輩の優しい話し方も好きです」
「そんなに褒められると、さすがに照れるね」
「あとはー、背も高くてカッコイイし、強いところもカッコイイです」
「ご褒美を買ってあげようかな」
「あははっ、ご褒美くれるんですか?」と笑う私に、夏油先輩の方からもクスクスと笑い声が聞こえてくる。
「あ、でもやっぱり一番カッコイイところは」
「まだあるのかい?」
「傑先輩が優しく笑ってくれた時かな!その顔を見ると何だか凄く安心するから」