第12章 黒い玉
私の言葉に、傑先輩が今度は先ほどよりも大きく身体を揺らした。
私はどうしたのかと思いゆっくりと後ろを振り返ると、そこには私が先ほど言ったばかりの、先輩の優しくて穏やかな安心できる笑顔があって。
「そう見えているのなら、きっとそれは相手が君だからだよ」
「私だから?」
キョトンとして傑先輩を見上げるが、どうやら私の疑問に答えてくれる気はないのか「ふふ、私も案外単純で分かりやすいんだな」と小さく呟くと、ぎゅっと優しく身体を抱きしめた。
薄暗かった空はあっという間に真っ暗になって、夜景がキラキラと煌めいている。やっぱりまだまだ冬なんだなぁ、空気が澄んでいる気がする。
「そろそろ戻ろうか、付き合ってくれてありがとう」
「いいえ、また一緒に夜のお散歩したいです」
「それじゃあまた、誘っても良いかな?」
「もちろん!いつでも誘って下さい」
「ありがとう」
どうか、今日は傑先輩がゆっくり眠れますように。
少しでも疲れが減ってくれたら嬉しい。
明日からまた、呪いを祓い続けるという繰り返しのような毎日がやって来たとしても。
どうか今日だけは、少しでも傑先輩の心が休まりますように。