第12章 黒い玉
だけれど、私よりも遥かに大きい傑先輩の両手の全部を包み込むことは残念だが出来ていない。
「傑先輩手大きいね」
「そうかい?」
「うん、七ちゃんとか雄君より大きい気がする」
傑先輩の手を必死に包み込もうと頑張って広げているけれど、やっぱりそれは叶わなくて…そんな傑先輩の大きくてゴツゴツとした男らしい手を見つめていると、傑先輩は持っていたホッカイロを私の手に握らせ、今度はするりとその手で私の両手を包み込んだ。
「こっちの方が良いね」
少しばかり冷えていた自身の手を、傑先輩が握りしめてくれたことによってジンワリと熱を持つ。
「エナの手は小さいね」
先ほどの私の言葉とはまるで反対の台詞が返ってくる。
「あんまりジッと見ないで下さい。呪具を強く握りしめるせいでタコが出来てて荒れてるから…」
普通の女の子みたいに、小さくて綺麗な手なんかじゃない。荒れてて所々傷もあるし、呪具を使うからタコだってある。普通の女の子の手とはかけ離れた汚い手だ。
「私は好きだよ」
「…え」
「いつも一生懸命頑張っているのを知ってる、これはその証だ。だから私は、この手が好きだよ。どんなに綺麗に手入れされた手よりも君の手が、ね」