第12章 黒い玉
飲み終えた缶をゴミ箱へと入れる。傑先輩も疲れているだろうし「そろそろ行きましょうか」そう言いかけた所で、ぎゅっと手を掴まれた。
「どうかしましたか?」
座ったまま私の手を握りしめた傑先輩を見下ろせば、先輩は少しばかり眉を垂れ下げそして小さな声を出した。
「もう少し、一緒にいたいな」
甘えるような、だけれど少しばかり力を無くし放たれたその声は、私の心をぎゅっとさせる。
傑先輩って、実は凄く甘え上手だよなぁと思いながらも、その心細そうな声を聞けばこくりと頷かずにはいられなくて、こんな傑先輩を一人にしておきたくないと思ってしまう。
だって、こうして傑先輩が私に甘えてくれたのが嬉しい。
いつも私ばかりが先輩に頼って甘えていると思っていたから、傑先輩が私へとこんな気持ちを見せてくれるのがたまらなく嬉しかった。
そして緩やかな笑みを見せれば、ホッとしたような顔を見せた傑先輩は私の手を取りそのまま歩き出した。
少しして外へと出るなり私の身体をふわりと抱きかかえると「んぇ?」と唖然としている私を余裕気にニッコリと見下ろし、一瞬にして上昇していく周りの景色に思わず目を白黒させる。
いつの間に飛び乗ったのか、足元には傑先輩がよく移動時に使用している移動用の呪霊が私達を乗せ空高く飛んだ。