第12章 黒い玉
「待たせてしまったね」
電話を終えた傑先輩がポケットへと携帯をしまい、私へと申し訳なさそうな顔を向ける。
いいや、勝手に待っていたのは私だ。
「最近特に忙しそうですね」
多分それもあってだろう。傑先輩の表情が疲れて見えるのは。
「まぁね、四年になったらさらに任務へ駆り出されるだろうね」
「私達も頑張らないとなぁ、先輩達にばかり任務が偏ってて申し訳ないです」
「ふふ、ありがとう。だけれど私としては後輩をあまり危険な目には合わせたくないけれどね」
「甘やかさないで下さい、先輩達が二年の時に比べたらきっと私達なんて大した任務こなしてないだろうし」
「まぁ私と悟は、最強だからね」
いつもと違い少しだけ意地悪気にニヤリと口角を上げ笑う傑先輩を見て、あぁ、やっぱり傑先輩と五条先輩は親友なのだなとそう思う。
こういうところがソックリだ。
後輩といる時は落ち着いていて大人びて見えるが、五条先輩や硝子先輩、夜蛾先生の前では少しヤンチャ者なのも知っている。高専の先生達からした、五条と夏油は二人合わせてそれはそれは問題児だと。
こうして一緒にいるとそんなこと微塵も想像出来ないが、そんな傑先輩はとても年相応に見えて高校生らしく好ましくも思う。