第12章 黒い玉
「ふふ、本当に君はいつも私の予想を簡単に超えてくる」
どうやら私はいつも傑先輩の想像を超えて来ていたらしい。
「ありがとう」
「お礼を言われるようなことは何も出来てないです…」
本当に、何にも出来ていない。傑先輩を元気付けたかったはずなのに…結局私は何も出来なかった。それなのに傑先輩は、こんな時でも優しい言葉をかけてくれるんだね。
「いいや、そんなことはないさ。実はさっきまで、情けないことに少し気が滅入っていたんだ」
それは、何となく分かった。普段の傑先輩じゃないみたいな…そんな不安を感じてしまうくらいには。
「だけれど、そんな気持ちも消えてしまったよ。久しぶりにあんなに大笑いをしたからかな。それに、私のためにあんなモノまで口にして」
「傑先輩のこと、少しでも知れたらなって思って…」
「うん、私はそれが嬉しかった。私のことを知ろうとしてくれて、慰めようとしてくれて、寄り添おうとしてくれたことが。凄く嬉しかったんだよ」
「それでも…何にも上手く出来なかったけど…それどころかただうえってなって傑先輩を嫌な気持ちにさせたかも」
「全然そんなことは無いさ。今まで何度か呪霊の味について聞かれたことはあったんだ。だけれどね、あんな風に身体を張ってまでその味を知ろうとした人はもちろんいなかったし、私の気持ちを理解しようとしてくれた人なんていなかった。これが私の術式だからね、それも仕方のない事だし当然なのだけれど」