第12章 黒い玉
私は右手に持っていたビンをパカっと開き「はい!お口直し」と言うと傑先輩の口へとポイッとそれを投げ込む。そして同じように自分の口にも同じ物を投げ込んでギュッと眉間にシワを寄せた。
「う〜!効く!すっごい効く!!どうですか傑先輩?」
あまりの口内への刺激にギュッと瞳を閉じていたももの、しばらくして落ち着いたころ瞳を開き傑先輩を眺めれば、これまた先ほど同様ポカーンと唖然としていた傑先輩は、次の瞬間には目尻を下げ大口で笑った。
「くくくっ」
「え?またそんなに笑うところあった?」
「いや、だって…っ、ふふ、口直しって言うからてっきりガムとか飴を想像していたんだけれど…くくっ、まさか梅干し口に入れられるとは思わないだろう?くくっ」
「え?おかしかったですか?でも私の中ではこれが一番パンチあるなと思って」
「はははっ、梅干しって…ふふ」
私が傑先輩の口に勝手に入れた梅干しによほどツボったのか、見たこともないほど可笑しそうに腹を抱えてクスクスと笑っている。
だけど何だか、そんな傑先輩を見ていたら自分がしていたことがやけに可笑しく思えてきて「ふふふっ、傑先輩笑すぎ!」なんて言いながら先輩の笑みに釣られるようにして私もクスクスと笑った。