第12章 黒い玉
傑先輩の気持ちを理解したくて、何か力になりたくてこうしたはずなのに、むせ返りそうになる吐き気を隠すことすらできない自分が情けない。
いや、私一体何やってるんだろう本当…傑先輩は爆笑してるけど、全くもって何の力にもなれていないし、アホみたいに思いつきで行動を取ったのが丸わかりだ。
シュンっと落ち込む様にしながらも、口内に広がる感じた事もないほどの不快感が支配する中、ふとある事を思いつく。
「あ、そうだ!傑先輩ちょっと待ってて下さい!」
私の言葉に、未だクスクスと笑っていた傑先輩のキョトンとした顔を背に私は急いで走り出した。これなら傑先輩の役に立てるかもしれない。
着いた場所は食堂の冷蔵庫だ。生徒達が自由に物を保管しておける共有の大きな冷蔵庫。私はその冷蔵庫の隅にちょこんと置かれているビンを手に取ると、再び走り出した。
「あった、これこれ!」
もう一度ダッシュで廊下を走り自動販売機前まで急いで駆け抜ける。
「先輩!おまたせ!」
ハァハァと軽く息を切らせ戻れば、そこを走り出した時と変わらず傑先輩がベンチへと座っていた。