第12章 黒い玉
「いや、それにしてもなかなかのお味ですね…吐瀉物を処理した雑巾を食べたこはないけど、その例えに納得しちゃった…」
うんうんと頷きながらも、時折込み上げてくる信じられないほどに不味い後味におぇっと吐きそうになっていれば
「ぶっ」
ぶ?
「あははははッ!!君って人は、本当に!ふふっ、一体何してるんだい、くくくっ、アレに噛み付くなんて、ふふふっ」
え、え?え??
目の前には大爆笑している傑先輩の姿。しかも、薄らと瞳には涙まで浮かべて。想像とはかけ離れた反応だ。
その表情には、先ほどまで見せていた疲労なんてモノはすっかりと消え去っていて、クスクスと笑いながら瞳に浮かんでいる涙を拭い取った。
「え…笑すぎでは?」
「ごめん、ふふふっ、でも我慢できなくて…っ。酷い味だって聞いた直後にあんなこと普通するかい?くくっ、しかもあんなに勢い良くかぶり付いて」
「だってそれは…うっぷ」
ヤバイ、無理。本当に吐きそうだ。傑先輩はいつもこれを我慢しているのか。
まるで何でもないみたいな顔をして飲み込んで来たのか。
凄いな、
傑先輩は
本当に、凄いな。