第12章 黒い玉
「硬っ!!」まずそう声が上がったその直後。
「まずいー!!ぺっぺっ!!ぎゃー!!」
ワンテンポ遅れてその味が口内へと一瞬にして広がっていく。何とも言い難い味だ。まるで口の中が腐ったみたいに酷い味が広がる。
そう、私は傑先輩の持っていた呪霊玉にかぶり付いたのだ。と言っても、もちろん呪霊操術の使い手では無いからそれを食べる事も取り込む事も出来はしないのだが。
少しでも、傑先輩の気持ちを理解したかった。そう言えば聞こえは良いかもしれないが、とにかく彼の心の拠り所に少しでもなりたかった。
目に涙を浮かべながら、痺れる様にして麻痺している舌をべーっと出して傑先輩へと目を向ければ
傑先輩は、今までに見た事がないほど瞳を丸め口を半開きにしてこちらを見つめていた。酷く驚いたのか、それとも唖然としたのかは分からないけれど、いつもの傑先輩からは想像も付かないほどに動揺しているのは聞かなくてもわかる。
「君…正気かい」
「え?…うぅ…」
「一体何して…」
未だにまだ戻らないほど傑先輩の瞳は大きく開かれている。
「あ、そうだ!あとで傑先輩が取り込むって言ってたのに勝手に舐めてごめんなさい!!」
そうだよ、傑先輩があとで口に入れるモノに私が口を付けるなんてよくよく考えたらアウトではないか。