第12章 黒い玉
「吐瀉物を処理した雑巾を、丸飲みしている様な味…かな」
ポソリと聞こえて来たその声は、まるで何の色も含まないみたいに…冷たく聞こえた。
吐瀉物を処理した雑巾を丸飲みしている様な味。それを何度も飲み込み取り込んでいるなんて、一体どんな感覚なのか私には到底分かりはしなくて。その言葉の冷たさと、傑先輩の瞳の影を見て、傑先輩は今までずっとその辛さを抱え生きて来たのかと思うと、胸が張り裂ける思いだった。
「だけれど平気だよ、慣れているからね」
平気な訳がない。平気なわけがないんだ。
絶対に平気な訳なんてない。
私は勢いよく立ち上がると、傑先輩と繋いでいたのとは反対の手をガッと掴み、その手に握られているモノ目掛け口を開いた。
少しばかり俯いていた傑先輩は、一体何が起きたのか分からなかったのだろう。私の突然の行動に、顔を持ち上げた頃には私は大きく口を開いていて
ガブッ
その漆黒に塗りつぶされたような黒に、勢い良くかぶり付いたのだ。