第11章 無意識に
夏油先輩の黒髪にサラサラと触れる。頬の横にあった髪を束で取り小さく三つ編みをすれば「ふふ、くすぐったいよ」と目尻を下げる夏油先輩の顔を見て、思わず私の頬も自然と緩んだ。
「もうすぐ、夏油先輩の誕生日ですね」
五条先輩の誕生日の時は、いらないなんて言われたら泣くどころじゃ済まないし、さすがに個人的なプレゼントを送る勇気なんかなくて…七ちゃんと雄ちゃんの3人で人気のお菓子詰め合わせセットを送ったんだよね。
今思えば、勇気を出してささやかなプレゼントでも良いから、私からだけのプレゼントを贈れば良かったかもなんて後悔している。
「覚えてくれているんだね、嬉しいよ」
「もちろんですよ。何か欲しい物ありますか?」
「気を使わないでくれ、覚えてくれていただけて嬉しいから」
「気なんか使ってないですよ!ただ夏油先輩の誕生日をお祝いしたいだけです」
いつも数え切れないほどお世話になっているんだ。先輩の誕生日はそんな普段の感謝を伝えるにはもってこいの日だ。
雄ちゃんも夏油先輩大好きだから、きっと夏油先輩の誕生日張り切るんだろうなぁ。