第10章 淡い想い
二年になりしばらくした頃、新一年との顔合わせがあると担任の夜蛾先生に教室へ来るよう言われた。きちんと悟を連れてくるようにと釘まで刺されて。
この頃すでにそこらの術師よりもはるかに任務をこなしていた私と悟はそれなりに忙しかったし、正直一年への興味よりも休みたいという気持ちが勝るほどには忙しなく任務をこなしていた。
「わざわざ顔合わせする必要あるか?メンド」
「同感だね、この後五件も任務が入っているのに正気のスケジュールとは思えない」
「どうせ入学したての一年なんてクソの役にもたたないでしょ。会うだけ時間の無駄。終わったらラーメン食いに行こうぜ」
「今後任務で顔を合わせることもあるだろうし、先に会っていた方が何かと都合が良いんだろう。さっきの私の話し聞いてたかい?ラーメン屋に行く暇はないよ」
昼食すらまともに食べれそうな時間がないんだ。どうせ嫌でもいつか会うだろうに。それなのにわざわざ会う時間を設けるなんて本当に無駄だなどと考えながら、古びた廊下を歩く。
日本人男性の平均身長よりもはるかに高い男二人が歩くと、高専の古びた廊下は容赦無くギシギシと軋んだ音を上げた。
目的の教室へと到着し、ドアに手をかけた所で中からは楽しそうな声が聞こえて来た。硝子ではない、彼女はこんな無邪気に大きな声で笑はしないからな。聞いたことがない女子の声だ、新一年のモノだろうか。