第10章 淡い想い
昔から何でも簡単に出来たからだろうか。自分の能力が他人よりも劣っていると思った事は一度もなかった。
勉強も運動も人付き合いでさえもだ。
それが覆されたのは、高校に上がり呪術師として呪術高専に入学してからだ。そこで初めて、自分よりも優れている人物に出会った。
五条悟。
見た目は同じ人間かと疑うほど整った顔立ち。一般家庭出の自分とは違い、呪術界では誰よりも有名な五条家の六眼持ち。
勉強も運動ももちろん呪術に関しても、人より遥かに優れており、そしていつも余裕に満ち溢れていた。
まぁ、性格は難ありなのだが。いや、なんなら難しかないのだが。
その見た目とのギャップがこれまたこちらとしては面白くて、仲良くなるのにそう時間は掛からなかった。
3人しかいない同期、そのうち唯一の女子は入学早々校舎裏で平気で煙草をスパスパと吸い、媚を売るどころか私と悟をクズと呼ぶ。今まで出会ってきた女子達とはまるで違うように見えた。
うん、良いね。凄く面白い。
入学前はそれなりに多少なりとも不安はあった。呪術師界にこれからは身を置くのだと。でもどうやらその心配はなさそうだ。この二人となら、今までのつまらなかった人生とは何か違った毎日が送れるんじゃないかとそう思ったから。