第10章 淡い想い
一目惚れという言葉が嫌いだった。
会った瞬間に恋心を抱くなどあるはずが無いと思っていたし、なんならそんな簡単に惚れる奴は馬鹿なんじゃないかとすら思っていたからだ。
自身の見目がそれなりに良い事は昔から理解していたし、カッコイイだの一目惚れだの言われて告白される事も少なくはなかった。なんならナンパされた次の瞬間には好きだと言われたことすらある。
だからだろうか、より一層一目惚れという言葉に対して嫌悪を抱いていたし、そんなことを平気で言ってくる人間を理解するなど到底無理だと思っていた。
何故一目見ただけで相手を好きになれる?例えどんなに美人だろうが可愛いかろうが、顔が素晴らしく整っていようが、そんなことあるはずが無い。
一目惚れなんて自分からはかけ離れた感情だ。
そう思い、一目惚れする奴を蔑んでいた自分に聞かせてやりたい。
あの時、あの場所で、あの瞬間
まるでそれが当然であるみたいに
自然に心へすとんと落ちた。
どうしようもないほどに
恋に落ちたのだ。