第2章 夏油先輩の部屋
溢れ続けていた私の涙が止まったのは、真っ暗だった空が白んできた頃。
もう目なんて前が見えないほどにパンパンで、どうしたら良いのかも分からないほど酷い顔をしているのは見なくても分かった。
「大丈夫?部屋に戻れそうかい?」
ただ何時間も泣き続ける私に、夏油先輩は目の前にしゃがみ込みずっと背中をさすってくれていた。
こんな空が明るくなるまで私に付き合ってくれただけではなく、時々優しい言葉をかけながらしゃくり上げる私に飲み物を渡したり、ティッシュを持って来たりしてくれた。
優しすぎる。夏油先輩は本当に優しい。
初めの言葉以降、何を深く聞いてくるでもなく泣き続ける私をずっと泣き止むまで待ってくれていたのだ。
部屋に…戻らないと。そう思うのに、いざ1人の部屋に帰ればまた同じ事の繰り返しのように涙を流してしまいそうで…いつまでたっても答えられない私に夏油先輩は困った素振りを見せる事なく頭を優しく撫でる。
「ここにいたら、そのうち悟が帰って来てしまうかもしれないよ」
「………っ…」
そしてさらに言葉をつまらす私に、夏油先輩は少し考えるような素振りをしたあと、眉を垂らし優しく微笑みながら口を開いた。
「もし嫌でなければ…私の部屋に、来るかい?」