第9章 合同任務
夏油先輩の本当の優しさは、こうして優しい言葉をかけてくれることだけじゃない。私をただ何も否定せず受け入れてくれるところだ。
穏やかな声も優しい笑顔ももちろんだが、躊躇うことなくこうしてありのままの私を認めてくれる夏油先輩が、きっと何よりもこの人の優しさの根源なのだと思った。
そんな事、きっと普通の人ならば簡単に出来はしないだろう。私だってそうだ…その人の在り方を、無性で受け入れることなど到底出来そうにない。
それなのにこの人は、それをいとも簡単にやってのけるのだ。まるでそれが当たり前であるみたいに…私を安心させ優しさで包んでくれる。
だけど私には分からない…いつだってそうだ。どうして夏油先輩がただの後輩である私にこうまでして優しさを与えてくれるのか。きっと私には、一生かけてもそんなこと出来そうにないからだ。
優しい人間でありたいと思う。何が人にとっての優しさで何が正解なのかなど分からないけれど、それでも人には優しくありたいと思う。
けれど、それでも…きっと私は夏油先輩のような無性の優しさを与えられるほどの人間ではないから。
だから夏油先輩を凄いと思った。この人の優しさは、間違いなく私を救っているのだから。