第9章 合同任務
まるで力を無くした私のその声に、私が掴んでいた手がフッと離れて、今度は夏油先輩の大きな手が私の手をすっぽりと包み込んだ。
「…先輩?」
「おいで」
「…えっ?」
両手を掴んでいたその手は今度は右手だけを引くようにして繋ぐと、軽く引き寄せるようにして歩き始めた。
エレベーターへと乗り込むけれど特に何かを話すつもりはないのか、夏油先輩は無言のまま私の手を握っている。
5階でエレベーターが止まったかと思うと、私の手を引いたままある部屋の前で足を止めカードキーでドアを開ける。そしてそのまま私を中へと招き入れた。
「シャワー浴びて来るからちょっと待ってて、あ、これ食べるかい?」
夏油先輩に手渡されたのはコンビニの袋に入ったいくつかのお菓子だ。それもいつも私がよく食べているお菓子。これ、夏油先輩も好きなのかな?そんなことを考えていると、私を椅子へと座らせた夏油先輩はあっという間に浴室へと入って行ってしまった。
何故いきなりここに連れて来られたのかは分からないけれど、とりあえず夏油先輩が戻って来ないことにはどうしようも出来ない。
それに今は…
とにかく喉がつっかえて苦しい。
馬鹿みたいだ、あの時もっと早く声をかけていれば…こうはなっていなかったかもしれない。
五条先輩はやはり今頃、あの女性と一緒にいるのだろうか…