第8章 気まぐれ
関係を持って以来こうして寝落ちをしてしまったこともそもそも初めてだけれど、こうして五条先輩が私へ世話を焼いてくれたのも初めてで、少しだけ戸惑う。
だけどもちろん、眠っている私にせっせと忙しく世話を焼いてくれたのかと思うと嬉しくて悶えそうだった。
「綺麗な寝顔だなぁ」
今日は晴れていたから、月明かりが良く部屋を照らしている。暗闇の中でもうっすらと見える五条先輩の顔は、やはり誰がどう見ても美しいとそう思った。
スッと筋の通った高い鼻。透き通るような白のまつ毛。キラキラと光る白銀の髪。
目の前で穏やかな寝息を立てる五条先輩を見て、こんな無防備な姿を見せてくれるのがたまらなく幸せだと思う。
だって、私に少しでも気を許してくれているということだから。まぁ…他のセフレの人に対しても…そうなのかもしれないけれど。
それでもこうして、五条先輩の部屋で一緒に眠っていられるのは私だけなのだとそう思うから、少なくともこの瞬間だけは優越感に浸っていたい。
五条先輩の寝顔を見ながらゆっくりと瞳を閉じる。いつまでもこの腕の中で眠っていたいなどと非現実的な気持ちを抱きながら、目の前の温もりを少しでも感じていたいと願って。