第8章 気まぐれ
だけど五条先輩は言った、私が前に観たがっていたDVDを借りて来たと。確かにそう言った。
て言うことは…元々私とDVDを観ようと思って借りて来たってことだよね?
え、何の気まぐれ?というか五条先輩はそんな事するタイプだったっけ。いやいや嬉しいのはもちろんだし、何なら嬉し過ぎて飛び跳ねそうなくらいだ。むしろ私が観たがっていたDVDのことを覚えていたなんて驚きだし、それを借りて来てくれた事も驚きなんだけど…
「五条先輩…いきなりどうしたの?」
いや、だって私達はセフレだ。そりゃあ私は五条先輩のことが好きで好きで仕方がないけど…でも五条先輩はそうじゃない。
それなのにどうして…こんなこと…
前から時々一緒にDVD観たりはしていたけど、それはもちろん私が観たがっていたDVDではなかったし、五条先輩とエッチしてその後に時間が出来たから何となく二人でぼーっと観ていたと言う方が正しい。
だから何で本当に、今こんな感じになっているのか分からない。
こんな優しさを貰って、あとでドン底に落ちるのが嫌だ。そんな事を考えただけで胸が軋んで痛む。
「どうしたって何が?」
「え、だって今までこんなこと無かったから…」
私の言葉にこちらを見下ろしていた五条先輩は一瞬キョトンとして見せた後、直ぐにその表情を元に戻すとリモコンへと手をかけた。