第8章 気まぐれ
はぁはぁと肩で息を吐き出しながら、熱を持った身体から必死で熱を逃していく。
私の腕を縛り付けていた五条先輩の手がそっと離れると、楽しそうに笑いなが身体をゆっくりと起こした。
「でも残念だけど今日はここまで、怪我人にはこれ以上手出さねェって言ったろ?」
まるで私が聞き分けのないペットみたいじゃないか。
「別に期待なんてしてない!!」
「素直じゃないねェ」
「五条先輩っ」
「はいはい、DVD借りてきたから観ようぜ。お前が前に観たがってたやつ」
床に散らばっていたDVDとケースを拾った五条先輩は、ベッドから立ち上がるとそれをDVDデッキの中へと入れてテレビを付けた。
さっきまであんなにも甘い雰囲気が漂っていたというのに、今ではすっかりDVDを観るモード全開でその切り替えの速さに思わず小さな溜息を吐き出した。
本当に五条先輩は意地悪だ。
だけど私の身体を気遣ってくれたのは間違いないから、これ以上文句を言うのはやめよう。
だけどそれにしても何故突然部屋に連れて来たかと思ったらDVDなのだろうか?一人で観るのが嫌だったとか?暇過ぎてヤバかったとか?
やっぱり五条先輩が私をここに連れて来た理由が分からない。