第8章 気まぐれ
「行くぞ」
「へ?」
そう言っていきなり引っ張られた手。かろうじて突っかけてきたサンダルを何とか脱げずに奥までしっかり履くと目の前で私の腕を引く五条先輩をまじまじと見つめる。
え?いきなりどうしたの?何事?
「五条先輩どこ行くの?」
行くぞ以外何も話さない五条先輩の背中にそんな言葉を放つけれど、もちろん返事は無くて、女子寮から談話室を抜け男子寮へと足を進めて行く。
だけどその足取りは、いつも長い足でスタスタと早く歩いているスタイルではなく、ゆっくりとのんびりとそんなペースで進められている。
私が怪我してるから…合わせてくれてるのかな?
五条先輩に握られている右手をじっと見つめる。こんな所でこんなにも堂々と手を繋いでいて大丈夫だろうか。まぁ繋いでいると言うよりかは引っぱられているんだけど。
そしてしばらく男子寮を歩いた後、当然のように見慣れたあのドアの前で五条先輩は足を止めるとそのドアをガチャリと開いた。
いきなりどうしたと言うんだろうか…何で五条先輩の部屋?
あ、もしかしてエッチしたくなったとか?でも怪我している人に手は出さないって言ってたし。それなら尚更ここに来る理由が分からない。
エッチ以外の事で好きな人の部屋に来る理由が無いなんて、悲しくてどうにかなってしまいそうだが…