第1章 Forget me not
少年の名はリヴァイ。歳は15。ローズより5つ下だ。
地下街でなにか困った時はリヴァイの名を出せばなんとかなるらしい。地下街では有名人のようだ。
こうして、ローズはリヴァイと共に地下街で暮らすことになった。
母が死んで1ヶ月。
あたたかな春の日だった。
「とりあえずその汚ぇ服から着替えろ。しばらくはこれでいいだろ」
リヴァイは潔癖症らしい。血や泥で汚れたローズの服を見て顔をしかめた。
箪笥の中から適当にシャツとズボンを引っ張り出し放り投げられる。ちょっと丈が足りない気もするが、許容範囲。むしろ汚れた服のままじゃなくなって嬉しいくらいだ。
ありがとう。と言うと、顔をそむけられた。
恥ずかしがり屋なのかもしれない。
「金集めと掃除は俺がやる。お前は買い出しと料理だけすればいい」
「ん。わかった」
どうやってお金を集めるのだろうか。なにか商売とかやってるのかな。
ローズの浮かんだ疑問は翌日解決した。
外がにわかに騒がしく、見てみるとリヴァイと大柄な男が取っ組み合いをしていた。リヴァイの圧勝だったが。
殴られ、ぴくりとも動かない男の懐に手を突っ込み、リヴァイは財布を盗んだ。そしてそれを得意げな顔で持ち帰って来た。
「す、すごいわね、リヴァイは……」
なんとか言えたのはそれくらいだった。
リヴァイを小柄な少年だと侮ってはいけない(侮るつもりは元々なかったけど)とローズはその日学んだのだった。