第7章 Odontoglossum
リヴァイと喧嘩をしてから数日が経っていた。その間必要最低限以外のことは喋っていない。いわゆる気まずい日々が続いていた。
ローズもリヴァイもこうした喧嘩をしたことがなかった。だから、どうすれば元通りになれるのかがわからないのだ。ただこのままではいけないという思いはローズの中にはあった。
「おや、ローズ。暗い顔じゃないか。なんかあったのかい?」
夕飯の買い出しをしようと露店を巡っていると、店主が話しかけていた。恰幅のいい女性だ。ローズは苦笑いをして頬をかいた。
「え、えへへ、バレましたか? ちょっとリヴァイと喧嘩しちゃって……」
「喧嘩ァ!? あのリヴァイが!?」
「あのってどの、ですか」
「だってアイツ、あんたにベタ惚れだろ」
「んぐぐぐ」
「照れなくてもいいって」
微笑ましそうに店主は笑ってローズの頭をかき回す。ぐらぐらと頭を揺らしながらローズは口をもごもごとさせた。強く否定できないのが恥ずかしい。
「そうだ、せっかくならこの機会に仲直りしたらどうだい?」
「この機会?」
不思議そうに聞き返すローズに店主は頷いてこともなげに言った。
「今日が誕生日じゃないか、リヴァイの奴」
「…………え?」
「ん?」
「えぇぇえええ!?!!?」
ローズの素っ頓狂な声が地下街に響き渡った。
リヴァイの誕生日が、今日!?! そんなの聞いていなかった!!