第2章 珍カップル、有名になる
呆れたようなため息を吐くのに、背中を撫でる手が凄く優しくて、それでまた涙が出る。
自分らしくないのに、それに甘えるみたいに大寿君にしがみつく腕に力を入れた。
「へー、もうべったべたじゃん。よかったな、大寿。可愛い彼女が出来て」
「うっせーよ。後は頼んだぞ、三ツ谷」
「はいはい。お疲れさん」
一度教室に入ったのか、室内がザワついたのが聞こえたけど、私にはそんな事どうでもよかった。
大寿君が何処へ行くかは知らないけど、それもどうでもよくて。
「で? お姫様はどちらをご希望だ?」
「学校以外なら、どこでもいい……」
そう聞いた大寿君に抱っこされたまま、学校を出る。
何をどうしたいとか、何も考えずにただその場の感情だけで動いただけだから。
大寿君はそれだけ言ってまた無言になる。
どのくらい歩いたのか、大寿君が扉を開けるのと同時に、首元に顔を埋めていた私は、そちらを見る。
「わぁ……」
神聖だと分かる、穢れがない場所。
ここは、教会だ。
私を抱いたまま、大寿君は椅子に腰掛ける。
「大寿君は、クリスチャンなの?」
「ああ。ここは落ち着くにはいい場所だろ」
そう言って、大寿君はまた黙る。
まるで異空間みたいに静かで、大寿君の鼓動だけが聞こえる。
落ち着きすぎて、眠くなる。
「で? 何事だ?」
私は凭れ掛けていた上半身を起こし、大寿君を見つめながら状況を説明する。ただ聞いていた大寿君が私を包み込むみたいに抱きしめ、頭に顎を乗せる。
「んなもん、ほっときゃいいだろ。実際、当たってるっちゃー当たってるしな。俺も別にそんな奴らに好いてもらわなくても、どうってことねぇよ。お前が苦しむ必要もねぇし、言いたい奴には言わせとけ」
大人なのか、諦めているのか、ただ興味がないのか。多分一番後者なんだろう。
「そうかも、だけど。でも、大好きな人を否定されるのは嫌だ」
これは、恋愛であろうと友情であろうと同じ事だ。
自分の大切な人が酷く言われる事は、とても悲しい。
「お前はほんとに変わった奴だな。他にも男はいるだろうに、何を好き好んで……」
「好きになったから、どうしようもありません。何なら、現在進行形でどんどん好きになってますよ?」
細胞がとでも言っておこうか。