第1章 夢野幻太郎が運命論者になるまで
彼女に最後に会ったのは高校2年。
関係で言うと元カノで、初めての相手だ。
未だにそれ以来、誰かと付き合うことも、体を重ねることもしていない。
つまり、引きずっているのだ。
「さん…なぜ…」
『会いたくてって理由じゃだめかな?
勝手に別れを告げて、勝手に会いに来てって思ってるでしょ?』
「そんなことはないと言えば嘘になります。ですが、あの時の小生たちは子供でした。転校は自分たちの意思ではなかなか覆らないことでしょう。」
『そうだね。うちも厳しかったから、逆らえなくて…。って言い訳に聞こえるね、これ。』
世間的に言ういい所のお嬢さんな彼女は
それはそれは溺愛されていた。
当時は貧乏だった小生とは釣り合わない。
加えて、彼女の父親の事業拡大に伴い引越しをする運びとなっていたのだ。
別れ話に、納得したような顔で頷きはしたが、
そこにはお互いの意思は全くない分、主に小生自身が未練タラタラという訳だ。
なぜ小生自身がというと
「そういえば来月結婚すると風の噂で聞きました。おめでとうございます。」
あまりにも冷めた口調になってしまったが、それでも頑張った方だと褒め讃えたいくらいだ。
「知ってたんだね。でも、結婚はしないんだ。っというか別れたの。」