第1章 夢野幻太郎が運命論者になるまで
晴天の霹靂とはまさにこの事。
『気持ちってね、正直だよね。ずっと好きな人を忘れられなくて、
渋っていたの。今回の結婚の件ね。パパの会社の下請けさんからの紹介なのよ。
パパもママも跡継ぎが欲しいし、気持ちなんて後から付いてくるから、1年間だけでも同棲してみたらと。
本当にいい人なら気持ちも代われたかもしれない、だけど、わかっちゃうんだよね。
後ろ盾ばかり気にしるのが、わかっちゃうんだよね。』
泣いてる私を見てられなくなって、パパもママも反省したみたい。
そう笑って伝える彼女。
「そうだったんですか…。ではシブヤにはその好きな人に会いに来たのですか。」
『うん。思いを伝えたくて。』
「その方とは、これから待ち合わせですか?」
昔話に花を咲かせそうにもないほどに、心は大雨。土砂降りだ。
『幻太郎ってさ、自分の話になると鈍感だよね。』
苦笑いしながら、呆れたように言う彼女に、はて?と小首を傾げる。
『そのずっと好きな人って話が、自分である可能性って1パーセントもないくらいに、
脈ナシだったりするのかな?』
自分勝手すぎるもんね。と目を伏せるその表情に、
全てを悟った。
「そ、れは…つまりは…小生のことをずっと…」
頷くと共に彼女をかき抱いた。
「引きずっていたのは、自分だけだと思っていました。
小生は昔も今も、貴女しか知らない。」
『ねぇ、幻太郎。運命って信じる?』
晴れて小生は運命論信者になったというわけです。