第1章 夢野幻太郎が運命論者になるまで
ー乱数の事務所での出来事
「やぁやぁ!ゲンタロー!今日はどったの~?」
「執筆に行き詰まりまして、少々取材をさせて頂けないかと。
おや?どなたかいらしているんですか?」
奥の部屋の扉から覗く、ソファーの背もたれにもたれた女性と思わしき髪。
乱数の所謂、オネーサンの内の一人か、仕事関係の方か。
どちらにせよ、日を改めた方がよさそうだ。
そう声を掛けようとすると
「あ、丁度良かった!ゲンタローにお客さんだよ!」
「小生にですか?」
なるほど。作家としての夢野幻太郎のファンか。
奥の部屋に行き、女性の顔を見ると
自身でも分かるほど目を見開いた。
『久しぶりだね。』
だいぶ探したんだよ。と笑う彼女は
大人びていてはいても、昔の面影はそのままだ。
乱数は出かけてくると空気を読んだのか、
外に出ていってしまったようだ。